はじめに
「うちの子、将来どれくらいの身長になるの?」
これは多くの家庭が一度は抱く疑問です。
身長は 生活・栄養・睡眠・運動 などさまざまな要因によって決まりますが、
やはり多くの人が気になるのが “遺伝” の影響。
今回紹介する研究は、
親の身長から「子どもの大人になった時の身長」をどれくらい正確に予測できるのか?
をリアルなデータをもとに検証したものです。
「Accurate Prediction of Children’s Target Height from Their Mid-Parental Height」(2024, Zeevi ら)
今回紹介する論文は2024年の最新の研究論文であり、遺伝的予測値の変数説明力(分散の何%を説明するか)などを解明した論文になります。
論文についてなるべく分かりやすく解説していきます。
予測身長って何?基本の計算式からスタート
まず知っておきたいのが、昔からよく使われてきた「予測身長」の計算式です。
ミッドペアレンタルハイト(平均身長)の式
- 男の子の場合
(父の身長 + 母の身長 + 13)÷2 - 女の子の場合
(父の身長 + 母の身長 − 13)÷2
とてもシンプルなので、小児科でもよく使われています。
子供の低身長について様々な情報がHPなどで公開されていますが、基本的にこの式はどのHPでも見かけます。
ただし、この数字はあくまで“目安”
予測値は目安で、現実には ±9cmほどズレても普通 です。
たとえば、
「予測身長165cm」なら、
156〜174cm くらいが自然な範囲と言われます。
つまり、
「165cmになるよ」と確定する値ではない ということです。
個人的には予測式のばらつきは非常に大きいと考えております。±9cmは18cmのズレを許容していることになりますので精度としては低いです。
論文では何を調べたのか? 論文による調査方法を分かりやすく説明
この研究が特徴的だったのは、
非常に多くの子どもを持つ大規模な家族データ を使った点です。
要は子沢山の家庭の調査をしてみた、という研究になります。
平均11人の子を持つ23家族を徹底調査
家族規模が大きいと、
- 遺伝の影響
- 個人差
- 環境の違い
を比較しやすくなり、より正確な分析ができます。
研究者たちは、
「親の身長・子どもの生まれた順番・成長のタイミング」などを細かく記録し、
その子どもたちが 最終的に何cmになったのか を追跡しました。
昔の予測式はどれくらい当たるのか?
論文は、従来の予測方法(ミッドペアレンタル式)がどれほど精度を持っているかを検証しました。
結果は…
予測式で説明できたのは36%のみ
「子どもの身長のバラつき(個人差)のうち36%は親の身長で説明できた」
という意味です。
この数値は予測式の精度としては低いと言わざるを得ません。
逆に言えば、
64%は親以外の要因が関わっている
ということ。親以外の要因としては
- 食事
- 睡眠
- 運動
- 二次性徴のタイミング
- 健康状態
- ストレス
- 社会環境
などが大きな役割を果たしています。
新しい補正モデルで精度が40%にアップ
研究チームは、新しい予測モデルを試しました。
補正したポイントは:
- 親の年齢
- 性別補正
- “平均への回帰”を考慮
これにより精度が 40% に改善しました。
大きな伸びではありませんが、
「親身長だけでは説明できない部分が多い」ことがよく分かります。
なぜ“予測身長”は外れるのか?その理由を深掘り
予測が外れる理由は複数あります。
① 平均への回帰(Regression to the Mean)
少し難しい表現ですが、これは統計でよく見られる現象で…
● 背の高い親の場合
→ 子どもは“予測より少し低め”になりやすい
● 背の低い親の場合
→ 子どもは“予測より少し高め”になりやすい
これは「遺伝のブレ」のようなもの。
論文でもこの現象がはっきりと確認されていました。
② 一人ひとりの成長スピードが違う
同じ家庭でも…
- 伸びる時期が早い子
- 遅れて一気に伸びる子
- 毎年少しずつ伸びる子
- 波がある子
など、パターンはさまざま。
二次性徴(声変わり・初潮)のタイミングも大きく影響します。
小児科でも思春期のタイミングを重視していて、思春期が遅い方が身長が伸びると言われていますので同じ親でもタイミング次第では身長の結果が異なるということは納得ができます。
兄弟で違う理由もここにある
兄弟でも身長が違うのは自然なこと。
- 食事量
- 睡眠リズム
- スポーツ習慣
- 成長のスイッチが入るタイミング
これらの違いが積み重なるため、
親身長だけでは説明しきれない差が生まれます。
家庭でできる“伸びる環境づくり”
今回紹介した論文を踏まえると予測身長を知ったら、
次に考えるべきは 環境の整え方 です。
科学的に成長に関係するポイントは次の3つ。
① 睡眠(成長ホルモンのゴールデンタイム)
深い睡眠の時間帯に成長ホルモンが最も多く出ます。
- 寝る時間を整える
- 夜更かしを減らす
- 朝日を浴びて体内時計を調整
これらは効果的です。
② 栄養(特にタンパク質・カルシウム・鉄)
身長の材料になる栄養素は以下:
- タンパク質 → 骨・筋肉の材料
- カルシウム → 骨を丈夫に
- ビタミンD → カルシウムの吸収UP
- 鉄 → 成長ホルモンの働きを助ける
「食事で足りない分を補助する」という発想が大切。
③ 運動(骨への刺激が成長につながる)
特に効果が高いのは…
- ジャンプ運動
- 走る
- バスケットボール
- 鉄棒ぶら下がり
とてもシンプルですが、成長期には十分な刺激になります。
我が家が実際に感じた“予測身長の落とし穴”
筆者の家庭でも、
子どもが成長曲線の下限(−2SD付近)で推移しており、
予測身長を見るたびに不安が大きくなった時期があります。
しかし成長データを毎月見ていると…
- 伸びるタイミングが遅いだけ
- 波が大きい時期があるだけ
- そもそも予測値の幅が広い
と、冷静になれる場面が増えました。
予測に振り回されるより、できる環境づくりを淡々と続けることが大事。
研究と家庭の実感がぴったり一致した瞬間でした。
まとめ:予測身長は“地図”。未来はこれからデザインできる
この研究の結論はとてもシンプルです。また、遺伝身長の予測式の数値が低くても希望が持てる研究内容です。論文をまとめると、
- 親の身長は「参考」にはなる
- でも未来を決めるわけではない
- 予測はよく外れる
- 子どもの成長には大きな幅がある
- 家庭で整えられる環境はたくさんある
つまり、
「背が伸びるかどうか」は“遺伝だけ”では決まらない。
むしろ、伸びる準備を整えることが未来につながる。
予測身長は“未来の地図”ですが、
実際の旅路は子ども自身と、家庭の環境づくりによって変わるのです。



コメント